給湯室へようこそ、コトブキです。
「いろんなところに行きましたシリーズ」天草編~青も夕陽も~
(第一話「熊本へ」)
(第二話「崎津教会」)
(第三話「 夕陽のマリア像を撮る」)
(第四話「祗園橋」)
(第五話「まさかの夕焼け、御輿来海岸」)
さて御輿来海岸の夕焼けを見送り、まだまだはるか先の熊本駅を目指す…
とその前に、それはそれは不思議な景色をスルーすることはできません。
見どころが多くてなかなか先に進まないぞ熊本は。
スルーできないというのは、この景色です。
引き潮の有明海に向かって、1㎞ほどの道と電柱の列が伸びています。
日が暮れてグレーの世界に、点々と灯が続いています。
遠く道の先に、漁船がいます。それにしても広い干潟!
もっと陸の方から撮れば更にわかりやすかったんですが…。
ここは、長部田海床路(ながべた かいしょうろ)。
海床路って聞きなれない言葉ですよね。
その正体は、「海苔漁などの漁業に携わる方々が利用する道路」なのです。
すぐ近くに漁港はあり、満潮時は問題ないのですが
遠浅の地形なために、干潮時に船は漁港に近づくことができません。
そこで、干潮時には船は戻れるところまで戻って、
この道を使ってトラックなどで船のそばまで出向く、ということです。
数年前に台風の被害があったそうですが、クラウドファンディングによって
復活したとか。なくてはならない生活道路ですもんね!
しばらくすると、寄せる波がいつのまにか海床路を奥から順番にのみ込んできます。
ひたひたと覆う波に灯が映り、こんどは灯の道が、沖から伸びてくるようです。
みなさん夜の海をご覧になった事はありますか?
闇の向こうから、ただただ潮風と波の音が迫ってくる世界。
しかし、海床路のある風景は、暗くて怖い夜の海のイメージとは違い
なぜか惹きつけられる、という不思議な感覚でした。
まぁ電気がついてるし人工物だからと言われればそれまでですが…
ここは、CMに登場したり、某有名アニメ映画の
水面を走る電車のシーンに似ていると話題になった場所でもあり、
旅行ガイド本などでは「映える」スポットとしてもよく紹介されています。
そういった見た目のファンタジー感ももちろん素敵なのですが、
惹かれているのは、本当はそこに感じられる「人の営み」の部分なのではないでしょうか。
海の中にまで道を造り電柱まで立てなければならない理由があったわけです。
その土地の人の、生きていくために創意工夫を凝らしたものって、
結果として美しいものになるんだな、としみじみ思います。